死にたい人へのメッセージ(静)

自殺防止のメッセージ集(文章)

得るもりよりも、失うものを考える

ネガティブ・インパクト(失う恐怖感)だけが、人を突き動かす原動力となる

 

 

 孫武は、呉王に招かれた時に、練兵をすることになりました。しかし、男ではなく、宮中の美女180人でした。勿論、軍事訓練などしたことは一切ない人達です。

 

 孫武は隊を二手に分け、呉王お気に入りの姫二名を、それぞれの隊の隊長に据えました。

 

 孫武はやり方の説明をした後、右へ向けと指示しますが、女達は笑うばかりで、真剣にやろうとしませんでした。

 

 その後、なんと、二名の王お気に入りの美女を斬ってしまいました。

 

 王はその直前、お気に入りの美女を斬らないように孫武を説得しますが、今は私の配下故、たとえ王のお望みだとて、聞き入れることは出来ません、と突っぱねました。

 

 その後、三番目にお気に入りの美女を後任の隊長に据えました。その時点では、目の前で実際に、つい直前まで一緒に笑い合っていた仲間の女二名が惨殺されたので、皆、殺されまいとして、真剣に、必死に練兵を行いました。

 

 

目標達成時のイメージを確立し、それを失わない方法を考え抜け!

 

 この話は、人はいかに失うことを恐れるか、ということを物語っています。この場面で、孫武は、[失うもの]をありありと周囲の女達に想像させました。その失うものとは、つまり、命そのものです。

 

 人間誰しも、自殺志願者や厭世気分で満たされた者でない限りは、自分の命は、そう容易く失いたいとは思っていないものです。故に、必死になって自らの命を守る行動に出たのでした。

 

 その他の事例でも、免許更新時に見せられる飲酒運転の末に死亡事故を起こした人の末路のVTRも、結局は、視聴者に飲酒運転の末に失うものは、こんなにも大きいよ、とアピールする手段です。

 

 人は、これこれこうすれば、これだけのものが得られますよ!と訴えても、中々、必死になってそれを得ようとはしません。そりゃ、一億円が貰えるとかならば、必死になってその指示を実行するかもしれません。しかし、単にアンケートに答えれば30ポイントプレゼントしますよ、程度のぶら下げたニンジンでは、あまり人の心は動かせないのです。

 

 しかし、人間、生きている限りは、確実に残りの時間は短くなっていっています。たとえ健康長寿になるように緑黄色野菜を沢山摂取しても、二十代、三十代といった若い時期はどんどん過ぎ去っていくのです。

 

 寿命が延びるといっても、それは老人の時間が延びるだけです。若い時期と比べると、あんまり、嬉しくありません。

 

 故に、失う恐怖を意識することは重要とのことです。人は失うことに特に敏感だからです。一万円を得ようと思えば、休日に臨時のアルバイトをすれば稼げますが、中々、人はそうしません。逆に、手持ちの一万円を失くしたら、金持ちでない限り、大ショックを受けてしまいます。

 

 故に、恐怖心を利用して自分を追い込む、と書けば、何かおどろおどろしいイメージですが、それだけ、恐怖心というのは人を行動させるに足りる燃料になり得るということです。